ある日、ついにユキが言った。
「秋也、どうしたらボクのコト好きになってくれるの?
もっとボクのコト愛してよ。ボクはこんなに秋也のコト好きなのに…」
見ればユキはライブのときより過激な女装をしていた。
「ユキ、お前そんなカッコして、どういうつもりだよ?」
「え?女の子のカッコしたら、秋也はボクのコト好きになってくれるのかなぁって思って」
「何意味のわかんないこと言ってんだよ!俺は…」
「俺は、何?ボクのコト愛してるっていうの?
愛してなんかないくせに!ボクのコト、愛してくれてないくせに!」
泣きわめきながら、ユキは俺に襲いかかってきた。
爪を立て、俺に乗りかかった奴は、首を締めつけてきた。
「ボクのコト、愛してるって言って!嘘でもいいから言って!」
ヒステリックな顔で見つめるユキ。
「あ…あいして、る…」
苦しまぎれに呟くと、ユキは首から手を離し、
両手で俺の顔を押さえつけ、無理矢理に舌を絡めた。
「うっ…」
べっとりとした感触。真っ赤な口紅の痕をベタベタと身体に残す。
「なんで…こんなに虚しいんだろうね?やっぱり、ボクが女だったらよかったんだ」
と、ユキは突然、ナイフを出し、自分の足に突き刺そうとした。
ユキは何かあると太ももを刺す癖があった。
「お前!何するつもりだよ!やめろ!」
「ほっといてよ!秋也には関係ないじゃん!」
「何言ってんだ、バカ!」
「うるさいっ!」
『 グサッ!』
ユキの太ももにナイフが刺さる。
「やめろ!もうやめてくれ!お願いだからやめてくれ!
もうこれ以上お前の傷を増やしたくないんだ!」
気付けば俺は泣いていた。
泣きながらユキの手に握られたナイフを奪おうとしたそのとき!
『 ザクッ!』
ナイフがユキの手から離れ、俺の手の平に刺さった。
赤い液体がつーっと流れ落ちる。
「秋也っ!秋也!秋也!…お、俺のせいだ…
ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、ゴメンナサイ……秋也ぁ…」
ユキは泣き崩れた。
「バカ!お前のせいじゃねぇよ!今のはただの事故だ!たいしたことねーよ!こんな傷」
「でも、ギタリストにとって大事な手に俺は…」
「そんなの関係ねーだろ!お前の方がひどい出血じゃねぇか!
俺の傷なんて…今までお前がつけてきた傷にくらべたら……。
ゴメンな、ユキ。もうこれ以上、お前に傷は付けさせない!」
ユキは肩を震わせながら「秋也、ありがとう…」と呟いた。
こうして俺はユキに対して愛情が芽生えていることに気付いた。
口にこそ出さなかったが、それはユキにも伝わったようだ。
それ以来ユキの奇行はなくなった。
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